目次
はじめに
前回の記事で、財務指標について書きました。拙著の下記の外部リンクをご参照ください。
少ない手間で決算書を読めるようになるー財務指標を知ることで経営判断ができる人になれます
上の記事は、財務指標の羅列で、つまらないと思われたかもしれません。
今回は、実際の企業の財務諸表から数値をあてはめていき、導き出された財務指標から、その企業の経営状況を考察できるようにしてみたいと思います。
ということで、上の記事で書いた財務諸表をExcelのシートにまとめました。
(くだもの小僧オリジナル:著作権フリー)
必要な数値を入力すれば、財務指標がExcelの関数で自動的に計算されるようにしています。
これで、財務指標の式を理解していただいたという前提で、あとは財務諸表の各値を入力すれば、財務指標が自動的に表示できるようになります。
例として、三菱鉛筆とパイロットの値を入力したものを掲載しましたので、ダウンロードしてみてください。Excelが使える環境でしたらご覧いただけます。
Excelシートの名前を変更すれば、その名前がタイトルに入ります。
サンプルで使用した有価証券報告書
三菱鉛筆株式会社 有価証券報告書 第147期 2021年12月決算
株式会社パイロットコーポレーション 有価証券報告書 第20期 2021年12月決算
三菱鉛筆の連結貸借対照表と連結損益計算書は有価証券報告書の、
47ページから49ページ、連結キャッシュ・フロー計算書は53ページです。
株式会社パイロットコーポレーションの連結貸借対照表と連結損益計算書は有価証券報告書の、51ページから53ページ、連結キャッシュ・フロー計算書は57ページから58ページです。
財務指標Excelシートの補足
財務指標シートはご覧になれましたでしょうか。
ちょっとダサダサなシートでお恥ずかしいですが、洒落たレイアウトを思いつけませんでしたので、とにかく掲載します。
何か良いレイアウトがあれば、改善したいとは思っています。
入力値の「当期純利益」までは、割と簡単に貸借対照表と損益計算書で見つけることができると思います。
それ以降(境界線として黒太線を付けました)は、貸借対照表と損益計算書で分かる場合もありますが、簡単には分からない場合もあります。
財務指標としては、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」と「労働生産性」のところです。
この2つの財務指標は、とりあず分からなくてもいい、と思われる方は、入力を省略して良いです。なぜなら、この2つの指標の入力情報は、調べたり電卓で計算が必要とか、ちょっと手間がかかるからです。
それでも、この2つの指標を出してみたいと思われる方は、下記の項(インタレスト・カバレッジ・レシオ、労働生産性)を参考にしてください。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオは、利息等の返済能力を測る指標です。
分子が事業利益で、分母が金融費用です。
三菱鉛筆のサンプルでは、分子に、受取地代家賃・受取保険金・為替差益も含めました。助成金収入が分からなかったのですが、助成金って本来一時的なものだと思い、含めませんでした。
分母については、為替差損・シンジケートローン手数料も含めました。売上割引は前掲の記事でも書きましたが、金融費用に入ります。
労働生産性
面倒なのは、労働生産性です。
この項に関しまして、サンプルとして採用した三菱鉛筆の2021年12月期の有価証券報告書を参照してください。
労働生産性の分母の従業員数は、有価証券報告書の連結の従業員数から取りました。
2ページ目の表の1番下の数値(2,816)です。
付加価値の、人件費と減価償却費が分かりにくいです。
これらは、製造原価明細書が提出されなくなりましたので、分かりにくくなりました。
販管費の明細は掲載されているのですが、製造原価の労務費や減価償却費は分かりません。
人件費は、提出会社の「平均年間給与」(8ページ目)に、連結の「従業員数」をかけました。苦肉の策です。
賃借料と租税公課は損益計算書に記載がなかったので、無視できるものとして0にしました。
金融費用はインタレスト・カバレッジ・レシオと同様です。
減価償却費は、キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローの「減価償却費」から取りました。
財務指標の分析
他社比較
2021年12月期の三菱鉛筆とパイロットの財務指標を並べて比較してみます。
下記図は財務指標シートから加工したものです。
収益性、効率性、労働生産性はパイロットの方が勝りますが、
安全性に関しては、三菱鉛筆の方に分があるようです。
両社とも、健全な財務体質だと思います。
二期比較
三菱鉛筆の二期の財務指標を並べて比較してみます。
財務指標シートから加工しました。
2021年の方が、収益性、効率性、生産性が向上しています。
安全性については、2021年の方がやや低下している数値がありますが、全く問題ない数値だと思います。
財務諸表を掲載しておきます
使用した財務諸表は、有価証券報告書でご覧になれますが、本記事でも掲載しておきます。
そもそも、有価証券報告書はどうやって閲覧できるのか、と思われる方のために、有価証券報告書の閲覧方法を記載します。
EDINETで有価証券報告書などを表示できます
Googleなどの検索エンジンでキーワード「edinet」「有価証券報告書」で検索し、EDINETのサイトを表示させます。
「EDINET」をクリックすると、書類簡易検索画面が表示されますので、ここに閲覧したい会社名を入力します。
ここでは「三菱鉛筆」と入力します。
「検索」をクリックすると、提出書類の一覧が表示されます。
今回は、「有価証券報告書ー第147期」の「PDF表示」をクリックします。
財務諸表の表示
上記の操作によって、下記の財務諸表が表示できます。
連結貸借対照表と連結損益計算書は有価証券報告書の、47ページから49ページ、
連結キャッシュ・フロー計算書は53ページです。
連結キャッシュ・フロー計算書については、ここで必要なのは、減価償却費だけなので、
営業活動によるキャッシュ・フローのみの表示にしました。
以上、EDINETによる財務諸表の閲覧方法でした。
終わりに
最後に、財務指標シートのひな形を掲載しておきます。
入力値が空なので、”0で割ってます!”みたいな警告が表示されてます。
入力値を入れていくと、Excel関数によって値が表示されていきます。
実際の財務諸表の値を入力することで、財務指標の理解も深まるのではないかと思います。
財務指標の理解の一助になれば幸いです。